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「……兎にも角にも……今は結局待つしかないってことだな。やっておけることは全てやったし、もう向こうの出方を窺うことしかやれることがねぇ。本当に……我ながら情けない話だな」
和樹は頭をポリポリとかき、とりあえずコーヒーを啜る。
もう飲みすぎて美味しいとは感じられない。
とにかくいくらなんでも暇すぎるのだ。
ついさっき一人言で呟いたように、やれることはもう既にやってしまっている。
和樹は部屋内の壁に取り付けたランプに目を向けた。
非常灯と全く瓜二つに作り上げたおかげで、それが目立つようなことはない。
そして、
机の上には開きっぱなしのパソコン。
そのランプと無線で繋がっている。
このビル内に張り巡らせたセンサーと監視カメラとも繋がったそれは、和樹の防御網の要とも言える存在だ。
もちろん、予備は予備で別に用意もしているが、そんな事態にはしたくないものだ。
和樹は既に立て終えたこれからのプランを頭の中で再び再生し、プランの見直しを図る。
相手のことは何も知らないものの、そのパターンを大まかに分け、それぞれの場合の対処法を考えておくことは可能だ。
そして、
いくつかに分けられたそのプランたちを、和樹は脳内で冷ややかに見つめ直す。
時間が有り余っていたおかげで、複数のプランはそれぞれ細部に至るまで既に決まりきっていた。
まぁ、
その後の結果についてだけはどの場合においても結局同じになるのだが、相手が未知の存在である以上、そこに行き着くまでの過程も重要だ。
この作業も、重要なものであることには違いない。
だが、
さすがにこの長大な待ち時間の間にやり過ぎてしまった。
確かに意味のある作業ではあっても、これ以上の回数は必要のないものだ。
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