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「お休みなさい……」
誰に言ったわけでもない言葉。
意識が、暗闇の中に落ちていく。
脳が、活動を一時的に停止させる。
体が、背景の一部のように固まっていく。
まるで普通の高校生のように、和樹は警戒心無く、ゆっくりと眠りの底へ落ちていった。
眠くなったから寝る。
原始的な欲求に従っただけのそれは、例えれば普通の高校生が授業中に行う居眠りと同じようなものだった。
和樹も17歳だということなのだろう。
いくら精神的に大人っぽかったとしても、年齢的に若いものは若いのだ。
それが和樹にとってかなり珍しいものだったとしても、よりによってこんな大事な時だったとしても、不思議な話ではない。
普段から眠りの浅い和樹は、普段から眠ることに一定のリスクを感じる和樹は、そうして目を瞑ったまま寝息を立てる。
時間にして10秒にも満たない。
とても速やかな就寝だった。
警戒心など一ミリも無かった。
その眠りは、普段では考えられないほどに深い深いものだった。
だが、
そんな時。
そんな、平和に過ぎる一時を過ごしている真っ最中のこと。
和樹の目は、突如としてパチリと開かれた。
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