距離感

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「・・ただいま」 自分でも聞き取りにくいような微かな声で部屋の中にいるであろう愛しい人に向けて帰宅時の挨拶を呟く。 今日彼が玄関まで出迎えてくれないのは何となくわかっていたことだし、帰宅した事を気付かれないようにしなくてはいけない日だということもわかっていた。 定期的に来る、彼の不安定な日。 日々の疲れと不安が募って爆発してしまう日。 いや、爆発という表現を使うのは語弊があるかもしれない。 彼は、小さくなって啜り泣くだけなのだから。 .
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