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「紅くん、」
遠慮がちに俺を呼ぶ声
「・・何」
つい冷たくなる返事に声の主は苦笑いする。
嫌いだ、こいつが俺を呼ぶ声が
蒼くんを、緑葉くんを、キノを呼ぶ声と明らかに違う遠慮した感じの呼び方
嫌でもわかってしまう、俺のことが嫌いなのだと
「隣、いい?」
凛々しい眉を少し下げて俺に問うシノレン
他のメンバーにはそんなこと聞かずに隣に座るのに
俺にだけ態々問うことにも苛々してしまう
「どーぞ」
チラ、とシノレンを見れば少し悲しそうな顔
少し距離を空けて座ると仕事について話し出す
こいつと最後に仕事以外で言葉を交わしたのはいつだろう
2人で笑い合っていたのはいつだろう
「紅くん、聞いてる?」
また遠慮がちに俺を呼ぶシノレン
視線を向ければ相変わらず悲しそうな顔でこちらを見ている
何でそんな顔すんだよ
俺と話すのがそんなに嫌?
仕事上だとしてもお前はそんなに嫌なの?
「っ・・悪い、他の奴に話して」
カッコ悪いけど、その場を去った俺
これ以上あいつのあんな顔見たくなかった
チクチクと痛む胸に知らないフリをしたまま俺は楽屋を出た
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