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~第三話 民と騎士~
ある朝、フレアは、イライラしながらも、騎士団長の命令どうり、街を見回っていた。
フレアが担当する街は、人が多く、活気に満ちているが、その為、犯罪も多いのも事実だ。
少しの悲鳴も聞き漏らさないように気をつけながら、街を歩いていた。
民を守ることには抵抗がないフレアは、黙々と巡回を続ける。
その時、何故かピリッと、何かがフレアの気に触った。
「…?」
辺りを見回すが、普段と代わり映えしない景色。
しかし、何やら違和感のする景色。
…何が足りないのだろうか?
もう一度、見回す。
「……!」
足りないもの。
それは、いつも街にいる、居酒屋の女主人だ。
彼女は、風邪でも引いたのかー?
そこまで考え、自分の考えに否定をする。
彼女が風邪を引いているとすると、居酒屋には、彼女の兄が居るはずだ。しかし、見当たらない。
嫌な予感がしたフレアは、辺りに意識を集中させる。
「…見つけた」
誰に言うでも無く呟くと、ある場所へ一直線に向かう。
そこは、居酒屋から少し離れの工場。女主人が多数の男に囲まれている。
「あんたらに払う金はないよ!」
「あー?あんたに無くてもコッチにはあんだよ!」
「キッチリ払えや!」
「身に覚えがないんだ!帰んな!」
何やら、知らぬことを押し付けられているようだ。
「…どうなさったのですか」
「あっ、貴方は…」
さっきまでの威勢は何処へやら。
女主人は少し瞳を潤ませ、フレアに助けを求める。
「んだぁ、てめぇ!」
「…淑女には、優しく対応されるべきですよ」
微笑んだフレアに、男達は怯む。
「…ちっ、行くぞ」
舌打ちをしたリーダーらしき人物は、男達を連れ、その場を離れる。
「…大事ないですか」
「はっ、はい」
「…お気を付けて」
「はい、ありがとうございます」
ぺこり。と頭を下げる女主人。
綺麗な、人。
「…羨ましいな」
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