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~第七話 白と黒の二重奏 中編~
「俺は一向に構わないんだけど、フレア、この間女装なんてしたく無いって言ってなかったっけ?」
「…したくないですけど…。
でも、上手く紛れこむには、それしか方法が無いですから…」
うぅう。と唸り、瞳を潤ませるフレアの容姿ならば、女だと誤解することは少なくない。女装するには適役だろう。
「パーティなら、男女二人組がセオリーだもんねぇ。ま、フレアがパートナーなら、俺は嬉しいだけだよ。王宮のパーティ、行ってみたかったしね♪」
そう言って、くすっ。と笑うレビントの瞳は笑っていなかった。
フレアに気付かれないように注意しながら、冷たい瞳になる。
以前にも、任務で女装したフレアとパーティに潜入したことがあったのだが、フレアは男どもに囲まれ、レビントはイライラしっぱなしだったのだ。
男だとバレないよう、さりげなく、体に触る男どもの間に体を入れてガードする。
緊張の連続だったのだが、しかし、レビントはフレアのお願いに弱かった。
騎士になる前からの友人であったし、フレアが騎士の道を歩くことを決めたきっかけは、レビントが騎士になるからだったのだ。
フレアならもっと楽な仕事に付けただろうと思うと、心が痛むのだ。
フレアは未だに敬語だが、お互いに親友であると思っている。
…と、そんなわけで、今までずっと、レビントはフレアのお願いを叶えてきた。また、フレアにとってレビントといると、一番心強いのだった。だからわざわざお願いに来たのだ。
「…レビント、ありがとう」
タメ口でぼそっと言ったフレアの声は、ちゃんとレビントに届いていた。
「ばーか、今更だろ」
ーこの出来事は、二人の運命が、また渦巻いてゆく、前奏でしかないー
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