少佐と少尉。

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今立花少佐は、山手線を2~3周は出来るであろう時間を経て尚も止まぬ、一式翁の長話に耳を傾けていた。 時計や携帯を気にする様子はなく、そわそわとしている訳でもない所を見るに、少なくとも仕方なく聞いている訳ではない事が伺える。 「しかし…正直な話驚いたでありますよ少尉。一式陸攻とはてっきりハンドルネームだとばかり…」 苦笑しながら少佐。一式翁のフルネームは一式陸攻。戦時中の日本軍機に興味を持つ者が一式陸攻と聞いたら、先程までの少佐同様ハンドルネームだと思うに違いない。 また一式翁の記憶が確かなら、陸攻をリクコウではなくいきなり『りくお』と正確に読めた者は、90年強に渡る半生の間に全く思い当たらなかった。 やがて一式翁が口を開く。 「無理もありませんよ少佐。私自身も上官から聞かされるまで、読みこそ違えど自分と同姓同名の攻撃機があるなんて知りませんでしたからね」
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