二人の少年。

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もし陸攻が理不尽な暴力の痛みと屈辱に耐え兼ねて泣こうものなら、悟一味は手加減する処か泣き虫毛虫と陸攻を散々笑い者にした挙句に、面白がって更なる暴力を加えるのは言うまでもない。 こんな嫌な日常が来る日も来る日も続くものだから、当然陸攻は頭の中で何百回何千回と悟に殴り掛かっている。 だが、もちろんそれを実行に移すことは許されない。 そんな真似をしようものなら、悟が母サトに出鱈目な告げ口をした上に、陸攻だけではなく加津子までも及川家を追い出される事が目に見えているのだ。 そうなってしまったら当然、加津子も陸攻も行く所がない。 加津子の実家は加津子の兄一式頼太(らいた)が既に継いでいるし、何より一式家は及川家から土地を借りている小作農なのである。 つまり加津子の実家は、及川家に睨まれたら最期沖縄の地で生きて行くのが極めて難しい立場に置かれているのだ。 そんな所に、因りにも因って及川家の跡取り息子を殴った張本人を連れて来ようものなら…その結果は火を見るより明らかである。 つまり加津子と陸攻は、間違っても及川家にだけは逆らう事が出来ないのであった。
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