二人の少年。

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「神主さん…」 「誰にも言うなよ。 ワシと陸坊だけの秘密だ」 呆気に取られたままの陸攻にそう言うと、山本神主はそそくさと兵学校の卒業證書を筒にしまってしまう。 「神主さん…」 「言っておくが、僕には兵学校なんて…等という、やりもしない内からの逃げや泣き言は一切許さんからな」 穏やかながらもきっぱりと山本神主。 陸攻は黙っていた。 山本神主が自分の心をお見通しであった事を知るや、思わず言葉を失ってしまったのである。 一方山本神主は、陸攻のそんな胸中を知ってか知らずか言葉を続けた。 「悟のテレンクレンの事なら心配するな。 ワシに考えがある」 山本神主はそう言って笑うと、何故かテレンクレンについて説明する事もなく、さらに大きく笑うのであった。
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