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高校生。
俺、大崎千景はこの言葉に憧れていた。
高校生になったら少し大人になって、今まで厳しかったルールがゆるくなって、楽しい事が沢山あるって思ってた。
俺の通っていた中学校は田舎にあって、生徒数は数人という小規模校だったから尚更楽しみだった。
早く、早く入学式にならないかって
早く、嫌なことを、リセットしたくって
***********
「千景!あんた何時だと思ってるんの!?もう7時半よ!」
ドサッ!
俺が意識を持つと同時に怒鳴り声が聞こえ、頭と背中に激痛が走った。
どうやら母さんに布団と一緒に引きずり落とされたらしい。
乱暴だ。横暴だ。鬼だ。
「ほら!早く起きなさい!入学式8時からでしょう?」
「んー……今何時…?」
「7時半よ!し・ち・じ・は・ん!」
じゃあ、は○○るマー○ットが始まるまで後一時間くらいあるな…
………ん?
「7時半?」
「入学式まで後30分。は○ま○マーケ○トが始まるまで後一時間」
なんですと!?
「ふざけんなよ!なんで起こさねーんだよ!」
「私もさっきまで寝てたのよ」
なんつー母親だ。
俺は母さんを部屋から追い出し、新品の制服に着替え、中身準備万端のカバンを手に取り、朝食もとらずに家を出た。
「いってらっしゃ~い。牛乳買ってきてね~」
「自分で買ってこい!」
高校までバスで25分。走って40分。
今の時刻は7時45分だから遅刻確定だ。
それでも俺は出来るだけ早く行こうとバス亭に足を運んだ。
だが、運が悪かった。
「ああ!?」
俺の視界にバス亭が映った途端、バスが出てしまった。
「はぁ……はぁあ…」
酸素が足りない。足りなくて苦しい。
立ち止まって、息を吸って吐いて。
もう学校行くの止めようかな…
とにかく、最速最短距離で学校まで行くには、もう走るしか残されていないのだ。
俺は1日入学で辿った道を思い出しながら走った。
心臓が破裂しそうな位バクバクいっている。
息もなかなか出来ない。
頭がボーッとして、真っ白になる。
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