第2.5話「懐かしい日々」

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どうして、そんな力があったのか……りこは今でもわからない。 もし、力が無ければ――と思った事などいくらでもある。 変に期待され、“世界”という大きな存在を救わなければならないという重圧が、りこを容赦なく襲った。 泣きたかったし、正直逃げ出したかった。 りこがそれをしなかったのは、ジュノ達が居たからだった。 りこが明らかに戦闘に向いていない事ももちろん知っているし、いくら神官が言う“勇者”とはいえ、りこはりこでしかない……というのが彼らの認識だった。 足手纏いにしかならない自分を支えてくれる仲間を守りたい。 その思いを心の支えにして、りこは魔王を倒す事だけを考え、魔王側の事情を知ってもそれを改める事は無かった。 長い年月を経た今ではもっと他のやり方があったかもしれないと思うが、当時のりこはそこまで心の余裕が無かった。 ジュノ達の事で頭がいっぱいだったのだ。 結果、りこは魔王と一騎討ちの状況となり、相討ちとなった。 その時の光景は、今でも時折夢に見る。 そう、今日も――。 .
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