2話 野に死す―――決別の咆哮

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 アランの色素の薄い月色の髪が、風に波形を描く。 「やっぱりこっちの方がいいわね……素敵」 「なっ!? お…おいエイラ? どこ行くんだよ」  脈絡もなしに褒められて、真っ赤になったアランが慌ててエイラの後を追う。 「貴方は、私を識(し)っても恐れないかしら?」 「え…」  セナンは、息を詰めて立ち止まった。  黄昏の残滓に照らされたエイラが、この上なく辛そうに笑っていたからだ。 (別に、恐れてるんじゃない。これは…憧れと畏怖が混じった…)  名前のない、何というか甘酸っぱい気持ちにさせるもの。 (これが、恋というやつなんだろうな…) 「俺は大丈夫だよ…エイラを恐がったりしない」 「嘘つき。フフ…髪の毛が逆立ってるじゃないの……いいわ、あたしが少し意地悪だったわね。誰でも皆恐怖心は持っているから、それが当り前よ」 「別に怖くなんかないぞ、俺は!」 「解ったから、怒らないで頂戴よ」 「悪い……。エイラは、ずっとあの家に独りだったのか?」 「初めは、三人で暮らしていたわ。両親と私で、何事もなく、平和に」  アランはエイラが小刻みに震えているのに気付いて、きつく手を握った。  エイラの脳裡には、次々と断片的に映像が浮上する。  母親の死に顔。  父親の慟哭。  そして、あちこちが壊れ…崩れた懐かしい家。 「エイラ…」 「ダメね、これくらいで震えたりして…バカみたい」 「エイラ…っ!」  明らかに正気ではない彼女。  すっかり瞳孔が開いてしまっている。  アランは声を荒げて、震え続けるエイラの背をきつく抱き締めた。
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