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薄茶けたカーテンごしに、少女・エイラはきつく唇を噛みしめる。
また、朝が来た。
苦い毎日が始まるのだ。
エイラの家族は、一家4人でここ…ガロ谷に住んでいる。
首都から離れたガロには、緑に燃える山脈が連なる典型的な田園風景が広がっていて、もちろん村人は自分達を入れてもやっと十を数えるくらいしかいない。
エイラは家族が大嫌いだった。
彼女が悪いのではない。依怙贔屓をする継母や腹違いの姉妹達が悪いのである。
継母のセシリア、そして歳の離れた腹違いの2人の妹達。
エイラがまだ幼い頃、母を失ったエイラの父は出稼ぎ先で出会った首都出身の女性を連れて村に戻ってきた。
女性はすぐに新しいエイラの母親として迎えられたのだが、彼女は一人娘のエイラに嫉妬し、依怙贔屓を始めた。
連れ子の姉妹にも当然、散々にエイラを憎むように躾た。
自分に、味方なんかいやしない。
エイラはそれを知っているので、それ以上なにも追究はしないでいる。
継母のセシリアにとっては、自分なんて居て居ないようなものだ。
彼女は、必要性のないものに容赦がない。
昨夜も、夕食の残りの皿に顔を押し付けられた。
『さぁお食べ、お前の夕食だよ』
堪えている自分がバカらしいけれど、もう仕方がないと思って我慢している。
『おや何、その眼は……貰えるだけありがたいと思いなさいよ』
この依怙贔屓は父が病死してから今に至り、今ではそれが不文律。
自分達はまるで貴族かなにかのように振る舞い、限りなく無遠慮だ。
足蹴にされる自分を見て面白がる妹達。
何様だと思っているのかは不明だが、とにかく勘違いも甚だしい。
奴らにはもう、他人に嫉妬するしか能がないのだろう。
エイラは、家族処か凡ての人間が嫌いになっていた。
もういっそ大事でも起きて、ここから出ていければいいと思う。
(できれば、の話だが)
今、エイラは汚れた食器を洗っている。
毎朝、厭味な妹達が金切り声で自分を起こしに来るのだ。
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