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「ラティアが、呪いを与える…?!」
【その立証者が、俺という訳だ。…解ったな】
愕然とした表情のまま固まったアランに、テュールは静かに面伏せた。
両者ともに痛々しい沈黙が蟠る。だが、それはすぐに破られた。
【話はそれだけだ。もうじきエイラも戻る…支度をしておけよ】
「……ああ」
【――――悩むことはない。エイラに取って、お前は必要な存在だ…こんな、俺なんかよりもな】
「えっ!?」
蒼い月は既に中天を過ぎ、生温かい風がアランの頬を撫でつけていく。
擦れ違った筈のテュールの姿は、もうどこにも見当たらなくなっていた。
「いない…」
アランは、埋み火になった焚火に砂を掛けて消す。
もうその瞳の何処にも、迷いはなかった。
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