0人が本棚に入れています
本棚に追加
別に叩き起こされずとも、既に起きているので自分はそれを無言で追い返すだけ。
奴らは、傍で優雅に『シャボン』で遊んでいるが、はっきり言ってかなりどうでもいい。
自分はどうせ、すぐここを出ていくのだから。
「エイラ姉さま、一緒にシャボンで遊ぼう」
「あらダメよォ、姉さまは今お仕事中なんだから…お皿でも割って母さまに叱られたら可哀想じゃないの」
クスクスと、厭味でどこまでも邪魔くさい姉妹だ。
「仕事が溜まってるから、遊ぶなら余所で遊んできな」
「可哀想なエイラ姉さま、あたし達はこれから都に行くのに…独りでお留守番だなんて」
「ほんと可哀想~」
(ウスラトンカチ共め、やっと去ったか)
耳障りな声が消えると、一気に静寂が押し寄せてくる。
今日は珍しくセシリアが里帰りするので、妹達は一緒に出掛けて行った。
エイラは、深く溜息して天井を仰ぐ。
仕事は多いが、それ以上に脅かされることはない。
本当に珍しい、平和な日だ。
エイラは食器洗いと洗濯を済ませ、窓を開けた。
爽やかな陽光と、夏風が吹き込んできてエイラのブロンドを揺らしていく。
エイラは、目を閉じると深呼吸をする。
久し振りに外の空気を満足に吸った気がした。
最初のコメントを投稿しよう!