4話 斜陽の都――先年の隠者

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「まあ…アラン、大丈夫? カゼかしら?」  テュールの唇から逃れたエイラは、慌ててアランの額に手を宛てて自分の額と較べてみる。 「あ、あぁ…大丈夫だ」  この時、アランはしっかりと見た。  …暗黒オーラを背負ったテュールが、舌打ちと口パクを交えつつ『後で覚えてろよ』と呪詛を掛けてきたのを。  凄まじい悪意を目の当たりにして、アランは呑んだ息と共に凍りついた。 (むしろ、具合は悪くない。この板挟み感がなんかイヤなんだよ! この人、絶対性格悪いよな。こうやって、エイラにバレないようにいびってくるし!)  どうにもこうにも、前途は多難なようだ。  そして、一番の難関は…鈍感な彼女(エイラ)だ。  鈍感な彼女に、アランは密かに肩を落とすしかなかった。 「ならよかった。早く行きましょ。この寒さ……私達は平気でしょうけど、アランにはきついのだと思うわ」 「え…」  エイラに気に掛けて貰えたのが、これほど嬉しく感じた瞬間は今かつてないだろう。  気を落としていた矢先の幸運に、思わず頬が赤らんでしまう。 「だってほら、手も、鼻の頭も、ほっぺただって真っ赤なんだもの」 「(え、そっち!?)」  そう言いながらマフラーを外し、一緒に手袋を差し出してきたエイラに、アランは思わずギョッと固まった。 「よッ…よせ、何をするんだっ、そんな事をしたら、君だって寒いじゃないかっ!」
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