1話 逃亡者

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「あらぁ……そんなのじゃ生温いわよ、いっそナメクジにでもしてやろうかしら。そして鴉にでも駆逐されればいいのよね」 (め、目が本気だ!)  思い切り黒い笑顔を咲かせるエイラを、やっぱり怖いと恐怖を抱くアランだった。 「結局どうするんだ? 本当にやるんだな?」 「決行は明日、アイツらも帰ってくるし好都合ね。アラン、しっかり演じてもらうわよ? 狼の姿で、事故を装ってあたしを襲って頂戴」 「は…え、えええっ!?」 「頼むわね、期待してるわ」 「う゛…」  邪を含んで底光りする眼から、目が逸らせない。  魔力、いや妖艶な魅力に引き摺られてアランは頷いていた。  屍骨のように仄白い月光が、辺境の村を照らしている。  微かに遠く、狼の遠吠えが響いた。
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