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テーブル近付く者、この大衆酒場の看板娘は白を基調とした服に赤いベストを着て、笑顔を振り撒きながらもくもくと湯気の上がる料理を乗せたお盆を両手に乗せ、零れそうなジョッキを指で挟んで歩いてくる。
「アプトノスのジューシーステーキ、お持ちしました~」
「先手必勝!」
「…!」
そして、テーブルに料理を置いた瞬間、看板娘の目の前で小さな火花が散った。
「ごゆっくりー」
目の前で交差し火花を散らすナイフとフォークを気にもせず、看板娘は次のテーブルへ向かっていく。
看板娘が去っていくなど、この二人には関係無かった。目の前の相手と(料理を)食うか、(料理を)食われるかの世界なのだ。油断なぞできるわけがない。
お互い数回ナイフとフォークを交え、やがて、決着がついた。
「…隙有り」
「しまった!」
男が伸ばしたナイフをかわし、女のフォークが大皿のステーキを捉え、そのまま口元へ。
「美味し。」
「くっそー!一口目を奪われるなんて!」
ステーキを堪能する女をよそにステーキに添えられたディアブロッコリーを口に運ぶ男。
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