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ミキと呼ばれた娘は擦り傷や切り傷をあちこち作りながらひたすら逃げている。
その背後からは「ケケケ!早く逃げないと喰っちまうぞ!」とおぞましい声が響く。
それでも娘は必死に走り、息を潜め物陰に隠れて老人の走り去るのを待った。
「何処に行ったぁ?上手く逃げたのか?」
老人が娘の隠れた場所から離れたのを確認し、ゆっくりと姿を出し辺りを見渡すと老人の姿はおろか、猫の子一匹もいない。
「た‥助かっ…た…」
娘がホッとした瞬間!娘の眼前に頭上から老人がニヤニヤしながら落下し「みぃぃつけた!」と言いながら長い舌で娘の顔を舐め回す。
「もうヤダぁぁ!」
娘は半狂乱になりながら再び走り出した。
「また鬼ごっこかい?私はもう疲れたよ」
老人がニヤニヤしながら再び追撃を開始し始めると、娘は泣き叫びながら助けを乞いフラフラになりながら最後の力を振り絞り駆け出した。
ドン…
娘は何かにぶつかり尻餅をつき倒れると、そこには紅い炎の様なコート姿の男が立っていた。
「おね…がい…た…すけて…」
娘は息も絶え絶えになりながら紅いコートの男に助けを乞いフラフラと弱々しく立ち上がると、その背後には老人がニヤニヤしながら立っていた。
「その娘を渡してもらえないかな?その娘は私の財布を盗もうとした悪い娘でね、これから警察に突き出す所だったんだよ」
「嘘よ!信じちゃダメ!あの爺さん…化け物なの!私の彼氏を殺して友達を食べちゃったの!」
紅いコートの男は二人の言い争いを聞きながら懐からライター状の魔導具『魔導火』を取り出して緑色の炎を二人の顔に近付ける。
魔導火が老人の顔を照らした瞬間!その目に紋様が浮かび上がり、男の顔めがけ勢い良く舌が飛び出した。
舌先を使った奇襲攻撃を喰らった男だが、直ぐに体制を立て直し身構える。
「龍馬、こいつがホラー・ブロッカーだ。奴の舌に気を付けろ!」
龍馬と呼ばれた男の指で狼を模した指輪が語りかけると、「一々煩いぞザビ!」と答えながら黒塗りの鞘から刀を引き抜き右上段に構えた。
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