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「クレア、一緒に世界を旅しない?私、あなたの返事いつまでも待ってるから」
いつでも、このセリフで夢は終わる。今日もそうだった。
俺に呼びかけてくる、あの子は誰なんだ?
ベッドの上で上体を起こしながら、ぼーっと考えていた。すると下から、母ちゃんの声が聞こえてきた。
「クレア、学校遅れるよー!」
俺はぼんやりと時計をみた。針は8時ちょっと前を示していた。
一気に目が覚めた。じたばたと学校に行く用意を済ませ、下に降りた。
「母ちゃん、おはよう!行ってきます!」
「行ってらっしゃい!はねられるんじゃないよ」
俺は、テーブルの上に置いてあるサンドイッチを掴み家を飛び出した。
走りながらサンドイッチを頬張っていると、後ろからロアが走ってきた。こいつも遅刻しそうなんだろう。
「ロア、おはよう!」
「悠長に挨拶してられないわよ。先行くわよ」
ロアとは、幼なじみだ。こいつは幼なじみの俺から見てもなかなかに美人で、言い方はかなり古いが学校のマドンナだ。
見た目が綺麗ってだけで寄ってきて、性格を知り愕然とする男たちを俺は何人も見てきた。
そう、こいつには女の子らしさがないのだ。
「私と付き合いたかったら、私に腕相撲で勝ちなさい」
と言い放ち、勝負を仕掛け必ず勝つ。
俺は校門近くでロアに追いつき一緒に中に入った。ぎりぎり間に合った。
教室に入ると、リノ先生がちょうど点呼をとっていた。俺の出席番号の前の奴が、眠たそうに返事をした。俺とロアはそれぞれの席についた。
先生は俺の名前を呼び、「今日もぎりぎりでしたね」と楽しそうに笑った。俺は少し照れながら頷くと、点呼を続けた。
出席番号が最後のロアまで行き、先生は「さてと」と言って言葉を続けた。
「今日は大事な日だということを皆さん覚えていますか?そう、今日はテストの返却日です!名前を呼ばれた方は、取りに来て下さいね」
リノ先生は歴史を担当している。今日はその歴史のテストが返ってくる日だった。
「ちなみに、今回のトップは89点のクレアさんです!おめでとう。二位は85点のロアさんです」
ネタバレされてしまった…。トップなのはうれしいことだが、少し恥ずかしい。
返ってきたテスト用紙を見ると、用紙の下の方に小さい字で、裏と書かれていた。
裏を見ると、リノ先生の字で「お話があります。空いているときにロアさんと来て下さい」と書かれていた。
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