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そして今、香澄は家の前に立った。
10数年振りの実家の前に。
腕を伸ばしチャイムを鳴らすと家の中から返事が聞こえた。しばらくして玄関の鍵を開ける音。
出てきたのは紛れもなく母のしのぶだった。
しのぶは一瞬誰だか分からなかったようだが、次の瞬間「香澄?」と呟いた。
「お久し振りです。連絡もしないでごめんなさい」
香澄はそう言って頭を下げた。
玄関を開けたままのしのぶは驚きを隠せない様子で香澄を凝視し、その後ろに隠れるように立っているひかりにも視線を向けた。
「上がりなさい」
しのぶに促され家に上がると、あの時と変わらない懐かしい家の匂いがした。
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