帰郷

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昔はかなりヤンチャをしていたらしく、体格もよく服のセンスもよい。 そのおかげで幼い頃は「香澄ちゃんのお父さんかっこいいね」とよく言われており、それが香澄と遥香の密かな自慢でもあった。 突然家を出た頃だって、いまでいうちょいワルオヤジな感じでまだまだ自慢できるくらいだった。 ところが今、目の前にいるのは、あんなに黒かっ髪が真っ白になり体型もかなり崩れている父の姿だった。 「おっと、お客さんか……」 そう言いながらそこに座る香澄とひかりをみた。父は香澄に気がつかず軽く頭を下げる。 「お父さん、香澄よ」 母の言葉に父は愕然とし絶句した。 当然だろう。 十数年前出張から帰ってきたら突然娘がいなくなっていたのだから。
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