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その光景を隣にいたひかりは、どうしたらよいのか戸惑い気味で見ていた。
「遥香。嫁入り前の娘が人前でみっともないわよ。ひかりちゃんが驚いてるじゃない」
いつのまにやらなにかを手にして母が立っていた。
「だって……」
遥香は鼻をすすり涙を袖でぬぐった。
「ごめんね」
遥香はひかりに謝り、香澄に視線を移した。それに答えるように香澄が微笑む。
「恥ずかしとこ見せちゃてごめんね。初めまして、妹の遥香です」
「ひかりです」
涙を拭き泣き笑いの顔でひかりに挨拶した。そしてその名前を聞いて数年前の『ひかりの名を呼ぶ姉に似た声』が頭を掠めた。
それと同時に甘くて優しいあの匂いが部屋に漂ってきた。
「さあ、みんなで飲みましょ」
母がお盆に人数分のココアを持ってきた。
「体にいいのよ」
「おいしい」
香澄、ひかり、遥香の三人は口をつけた後声を揃えて言った。
「うふふ」
「ふふっ……」
三人は目をあわせ笑いだした。
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