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普段は二人っきりの食卓が、今日は賑やかだった。
やっと部屋から出てきた父の貴浩(たかひろ)に母。遥香の隣にはひかり。そしてその隣に香澄が座る。
その場でひかりを父に紹介すると、父は初めての女孫に目を細めた。
食卓に上がったのはどれも母の手作りのものだった。香澄は懐かしい味に涙腺が緩んだ。
「これ、あたし好き。ママよく作ってくれるよね」
「ママどっちが美味しい?」
母の意地悪な質問にひかりは困ったような顔をし香澄を見た。香澄はその顔に微笑んだ。
「ちょっとお母さん、ひかりちゃん困ってるよ。ねぇ?」
すると遥香が助け船を出してくれた。
「あたしはまだまだ。お母さんの味には到底及ばないよ」
「あたしはママの味も好きだよ」
香澄は「ありがとう」とひかりにお礼を言い頭を撫でる。
「遥香もしっかり料理覚えないとね」
「もう、分かってますっ」
いきなり自分に矛先が向き遥香は頬を膨らませた。
みんなの笑い声が食卓に響いた。
和やかな雰囲気に香澄も安心し、久しぶり母の味に胸をいっぱいにしながら料理を口に運んだ。
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