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数日後、妻は最期の時を迎えていた。
徐々に浅くなっていく妻の呼吸。俺はその体を優しく抱き締め続ける。
そして……。
医師が妻の手首を取り、次に胸元から取り出したライトで確認し、腕時計に目をやり時刻を確認する。
医師は静かに妻に永遠の休息が来たことを告げた。
俺は小さく頷き、まだ温かい体を抱いたまま妻の髪を頬を優しくなでた。
「香澄、香澄。俺、幸せだったよ、……愛しているよ。……今までありがとう。……ゆっくり休むんだよ」
諭は約束どおり香澄の最期を看取った。
腕の中の香澄は微笑んでいるかのような、それはそれは穏やかな顔をしていた。
くしくもその日は桜の満開宣言が出された日だった。
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