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綺麗な草原。綺麗な白い空、そこに僕、木葉 尚兎(コノハ ナオト)はごろごろと寝転がっている。
姿は20代前半の姿はとっているものの、実年齢は50歳だ。なぜ実年齢と姿が異なるのかと言うと、
「あーあ、盆は天国に残るもんじゃないなぁ。」
そう、ここは天国。つまり、僕は死んでいる。死んだらその人の一番好きだったころの自分の姿になるというのは本当だったようだ。
「郵便で~す」
佐○急便と同じ色使いで縦じまのユニフォームを着た配達のおじさんがいい笑顔で大量の手紙を持って来た。
ドサッと音がして、僕の前に手紙が置かれる。
「では、またご利用を~」
笑顔で去っていくおじさん。彼はきっと死ぬ前も佐○に居たのかもしれない。
そして手紙に目を向ける。花柄、茶封筒、形や色は様々。その中の一つ、薄ピンクの縦長の封筒に手を伸ばす。
『お父さん、久しぶり。あたしね、今度子供が産まれるの。名前はお父さんの字からもじってナオヤにしようと思ってるの。お父さんも、天国から見ててね。』
「孫かぁ…僕もちゃっかりじじいだな。」
なんとなく枯れた言葉を口にする。
この手紙はお盆にお迎えに来た時の言葉で僕みたいに帰らない人にこうやって手紙で知らせてくれる。さて、次は妻のかな。
『お父さん。茜に子供が出来たの。男の子ですって。お父さんも孫くらい見てから逝けばよかったのにねぇ。孫の可愛さは私がしっかり堪能しておくから自慢話ちゃんと私が逝ったときは聞いてくださいね。』
まったく。もうすでに孫の話ばかりじゃないか。よし、妻が来たら老けたと馬鹿にしてやろう。
ちょっとした孫の羨ましさの腹いせだ。
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