これだからおとこってやつは

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「愛の鞭ですか。物は言い様ですね。 言い訳をするわけじゃありませんが人間って不完全じゃないですか?」 「……そうだね。完璧な人間なんて、それこそ小説内だけだ。 逆に小説のほうが忌み嫌われるかもな」 「でしょう?人間は自分に無いものに憧れてしまうんですよ。 私は自分が語彙力が無いことも、文章力が無いこともわかっているです。しかし国語は大好きです!」 「そうだな。俺も横文字はサッパリだがヨーロッパは大好きだ」 「……違うような気がしますがそんな感じです。結局はどうにかなるんですよ」 「年寄りじみた事言ってるな、中学生」 「もう16年も生きているです。人間、嫌でも歳は取りますよ」 その齢にして既に人生というものを悟っているようだ。末恐ろしいというかなんかセンチメンタルな気分だ。 「で、本気で目指しているんだろ?小説家」 「当たり前です!」 「それなら頑張れるさ。俺がそうだったんだから」 そう、あれは俺が玲ちゃんぐらいの――― 「あ、回想はダメです!過去編なんて漫画ですら読むのが億劫なんですよ?させません!」 「いや、俺の教訓を……」 「いいんです」 「いいって――」 「だって私たちは同盟なんです! 草氏さんの言いたいことはわかります。でも私にはその過去を乗り越えてきた心強い仲間がいるです! 過去は過去、今は今!手伝ってくれますよね?」 なんだか俺の方が子供みたいだ。センチメンタルってレベルじゃねぇ。あ、涙が…… 「ん?なんです?」 「いや、なんでもない。これから覚悟しておけよ?」 「はいっ!」 うーむ、しかし不完全燃焼だ。話を遮られるのは慣れているが今回は余計モヤモヤするなぁ。 そうだ。俺の名が売れたら自伝でも執筆しよう。うん、それがいい。 「わ、わたしは一体何をされるのでしょう……」 怖い思いでもしたのだろうか? 玲ちゃんは俺の顔から目を離したかと思うと、怯えた表情で奮えていた。
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