「れいちゃんどうめいけっせいです」

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「いいじゃないですか、そんな小さなこと。それでなんでです?哲学でも始めるんですか?」 「いや、そういう事ではなくてだな……」 「まさかモテないおじちゃんが美少女玲ちゃんに恋の手解きをしてもらいたいとか???」 グサッ!!! 「…………」 「あ、あれ?もしかして本当に……」 「ああ!そぉーですよ! 俺は――生まれてこの方、恋なんてしたことが無いですよ!笑えよぉぉぉぉ!声高らかに笑えばいいだろ!? あーはっはっはっはって!」 その瞬間店内がシーンと静まりかえる。そして何処からともなくクスクスと笑い声が聞こえて来た。 他の客を見ると一様に顔を背けた。 「そうれすかそうれすか…」 玲はいつの間にか運ばれてきたクリスピーをおいしそうに食べていた。 「人を哀れむような目で見んな!」 「草氏さんも苦労してきたんですね。それよりもそんなキャラだったなんて驚き桃の木アントニオ猪木です。 あとちょっぴり恥ずかしかったりします」 「ああ。失恋少女に相談したのが間違いだった」 「むぅ……恋したことが無い人よりはマシです」 「なんだと……?」 「なんですか……?」 …………。 はぁ、馬鹿馬鹿しい。何を中三女子と睨み合っているんだ、俺は。 「今度の小説だよ。霧谷に恋をさせたい……いや、させなきゃいけないんだが――」 「関心の筆者が未体験だと」 「未体験言うな」 「あ」 「なんだ?」 「草氏さん、1月1日は何か用事は?」 「何も無かったと思――」 「無いですよね?無いはずです。無いに決まってます」 矢継ぎ早に繰り出される罵倒とも呼べる予定の確認に反論したくなるが、そもそもそんな予定が無いことで既に心が沈んでしまっているためそんな気力さえも浮かんでこなかった。 俺はどうやら彼女もいなければ友達も少ないらしい。少ない割りに強烈な奴らが勢ぞろいしてしまっているが。 そんなことを考えているうちに彼女はウンウンと頷く仕草をして、考えがまとまったように言った。 「じゃあ一緒に初詣に行きましょう」
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