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「危ない!!」
ライブの映像みたいに目の前でヒナが車に轢かれて体が飛ばされた。
ロケが終わってロケバスに乗り込もうって時に突っ込んできた車。
吹っ飛ばされててくヒナの体
夢やと思いたかった。
「ヒナ、ヒナ!!」
飛ばされたヒナに駆け寄る。
「…ヨコ?」
目を閉じたままにへらっと笑うヒナ。
「痛いやろ、話すな」
周りはざわざわしとるけどなんも耳には入ってこん。
「話すのは平気、でも痛いせいで目開かんな」
口元は笑いながらもだんだん弱っていっているのが目に見えて、
「痛いんなら話さんでええ」
でも今の俺にはどうすることも出来ずにいて、
「話さんでおったら死んだ思われるやんか」
ただ倒れているヒナの体を支えて涙を流すことしか。
「せやな、なら話しとき」
なんて無力なんやろう。
「どっちやねんな、ヨコ」
俺が神様やったらヒナを救えるんに。
「なぁ、ヒナちゃん」
神様おるんなら助けてや。
「なにぃよ?」
俺の命くれてやるから、
「…キスしよか?」
助けてやってや。
「…ライブの映像みたいやな」
痛いはずなのに、軽く俺の服を握ってきたヒナを
「そうやな」
助けてや、神様。
そして俺の涙が落ちたヒナの唇を優しく指でなぞり、
子どもみたいな触れるだけのキスをした。
周りはざわざわしとるけどなんも耳には入ってこん。
唇を離せばヒナの口角は上がったままでいて。
「…ヒナ?」
何も返事してくれず、
「お前言うように話さんと死んだ思うやんけ」
微かに聴こえていた呼吸の音も、
「ほら、…笑えや」
呼吸するたび動いていた胸部も、
「八重歯見せて、笑ってや」
動かない心臓が全てを物語っているのに。
「なぁ、ヒナ、なんか言えや!!」
認めることが出来ない俺はガキやねんな。
***************
ヒナがおらんようなって半年たった。
ヒナが住んどったマンションの屋上に立つ俺。
「今いくからな」
淋しがりやから一人でおるのは辛いやろ
そして足をゆっくりと前に進め、空を切り。
ゆっくりと目を閉じれば笑顔をヒナがおって、
笑顔を思い浮かべれば口角を上げる。
そして思考は全て無くなった
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病んでるんです、ごめんなさい
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