その4

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3日後、私は仕事に向かった。 「…はぁ、行きたくない」 足取りは重いが、仕事は仕事。 新徳寺へ向かう。 しかし、寺の様子はがらりと変わっていた。 「なんか、この前のおっきな集まり以来、みなさんお忙しそうで…、ほとんど寺にいはりません。食事の準備も数名分」 …そっか。この人たち、 もうすぐ江戸に帰るんだ。 清川さんとも会うことなく、 その日が来た。 あの日ばりの会合が開かれた。 今回も白熱している様子。 しばらくして、住職から知らされる。 「今日明日あたりに浪士組の方々は江戸に戻られるそうです」 いよいよか…。 「椿はん、お茶お願いしてもいいか?」 富さんから言われ、指示された場所にお茶を運ぶ。 歩いている廊下で 「何しにここまで来たんだか」 「全くだ」 そんなことを話す人たちとすれ違った。 「失礼します。お茶をお持ちしました」 「ああ、配らずにそこに置いておけ」 声がしたため、お盆を置いて戻ろうとした。中から小声で話すことが聞こえた。 「清川とその取り巻きは、帰路も行動に注意をしておけ…もしもの時は…」 あわててその場を去った。 「それでは、一同江戸へ向かって出発する」 その言葉を皮切りに、団体が続々と寺を出る。私たちは、それを見送る。 少し離れたところで清川さんと数名が住職と話していた。 話が終わったのか、歩き始めたときふと目があった。 清川さんは、無表情で片手を上げ、頷いた。 私は頭を下げた。 二度と会うことはないんだ… そう思うと胸がきゅっと締め付けられる感じがした。
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