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3日後、私は仕事に向かった。
「…はぁ、行きたくない」
足取りは重いが、仕事は仕事。
新徳寺へ向かう。
しかし、寺の様子はがらりと変わっていた。
「なんか、この前のおっきな集まり以来、みなさんお忙しそうで…、ほとんど寺にいはりません。食事の準備も数名分」
…そっか。この人たち、
もうすぐ江戸に帰るんだ。
清川さんとも会うことなく、
その日が来た。
あの日ばりの会合が開かれた。
今回も白熱している様子。
しばらくして、住職から知らされる。
「今日明日あたりに浪士組の方々は江戸に戻られるそうです」
いよいよか…。
「椿はん、お茶お願いしてもいいか?」
富さんから言われ、指示された場所にお茶を運ぶ。
歩いている廊下で
「何しにここまで来たんだか」
「全くだ」
そんなことを話す人たちとすれ違った。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「ああ、配らずにそこに置いておけ」
声がしたため、お盆を置いて戻ろうとした。中から小声で話すことが聞こえた。
「清川とその取り巻きは、帰路も行動に注意をしておけ…もしもの時は…」
あわててその場を去った。
「それでは、一同江戸へ向かって出発する」
その言葉を皮切りに、団体が続々と寺を出る。私たちは、それを見送る。
少し離れたところで清川さんと数名が住職と話していた。
話が終わったのか、歩き始めたときふと目があった。
清川さんは、無表情で片手を上げ、頷いた。
私は頭を下げた。
二度と会うことはないんだ…
そう思うと胸がきゅっと締め付けられる感じがした。
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