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「…また増えた。帰らんで居座りはった」
雅さんの機嫌がすごく悪い。
それもそのはず…帰るはずの彼らは居座り、なおかつメンバーも増えてるんだから。
近藤派と…芹沢派がこの八木家にそろったということになる。対立的な関係にあるかと思いきや…すごく仲がいい。
芹沢さんは、横暴な面は今のところ見られず…むしろ紳士的で慕われている。
「なーんか、拍子抜け。凶悪な奴かもって構えてたぶん、すごくいい人に見えて仕方がない」
椿姉もそんなことを言っている。
そんなこんなで、浪士組の人たちに夕食の配膳中。
「そろったか?では頂こう」
芹沢さんが言うと、一斉に食事が始まる。私はお櫃の前にスタンバイ。お寺が休みの椿姉もお茶を配ってる。
「そうだ、椿。おぬしに頼みがあるんだが」
「なんですか?」
芹沢さんと近藤さんはともかく、椿姉の3人はなぜか仲良し。話が合うのだという。
「明日、少し高値の紙を買ってきてほしんだが…」
「…芹沢さん…あなたまで…はぁー、わかりました」
なぜかジト眼の椿姉。
「いろいろとすまんな。落ち着けば、そのうち甘味屋でも連れっていくから」
「喜んで行ってきます♪」
ぱぁっと表情が変わる。それを見て芹沢さんと近藤さんはははっと笑う。
芹沢さんは、他人の気持ちを読むのが上手で、気配りや配慮も十分できる。冗談や面白い話をして場の空気を和ませることもしばしば…、この人本当に芹沢さん??
そしてさらに…
「近藤よ、ここも少し手狭だな。広いところに移動したいとは思わんか?」
「そうですね。そろそろ本格的に稽古しなければ体も鈍りますし…。ただ、今は住むところにも食べることにも贅沢は言いません」
「そうか…、土方はどうだ?」
「…京に残る以上は、当初の目的だった仕事をやる必要があります。仕事には人もいる。いずれ人を増やすとなると、ここじゃ無理だと思います」
「…儂もおぬしの考えと同じだ。人が増えるための場所が必要だ」
お茶をずずっとすすり、ごくっと飲み込むと
「その場所を探すのを…土方、おぬしに任せてよいか?」
「…!ああ、もちろんだ!」
それぞれの能力を見極める力と…人をやる気にさせるのが上手だ。
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