第2章 その1

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「…また増えた。帰らんで居座りはった」 雅さんの機嫌がすごく悪い。 それもそのはず…帰るはずの彼らは居座り、なおかつメンバーも増えてるんだから。 近藤派と…芹沢派がこの八木家にそろったということになる。対立的な関係にあるかと思いきや…すごく仲がいい。 芹沢さんは、横暴な面は今のところ見られず…むしろ紳士的で慕われている。 「なーんか、拍子抜け。凶悪な奴かもって構えてたぶん、すごくいい人に見えて仕方がない」 椿姉もそんなことを言っている。 そんなこんなで、浪士組の人たちに夕食の配膳中。 「そろったか?では頂こう」 芹沢さんが言うと、一斉に食事が始まる。私はお櫃の前にスタンバイ。お寺が休みの椿姉もお茶を配ってる。 「そうだ、椿。おぬしに頼みがあるんだが」 「なんですか?」 芹沢さんと近藤さんはともかく、椿姉の3人はなぜか仲良し。話が合うのだという。 「明日、少し高値の紙を買ってきてほしんだが…」 「…芹沢さん…あなたまで…はぁー、わかりました」 なぜかジト眼の椿姉。 「いろいろとすまんな。落ち着けば、そのうち甘味屋でも連れっていくから」 「喜んで行ってきます♪」 ぱぁっと表情が変わる。それを見て芹沢さんと近藤さんはははっと笑う。 芹沢さんは、他人の気持ちを読むのが上手で、気配りや配慮も十分できる。冗談や面白い話をして場の空気を和ませることもしばしば…、この人本当に芹沢さん?? そしてさらに… 「近藤よ、ここも少し手狭だな。広いところに移動したいとは思わんか?」 「そうですね。そろそろ本格的に稽古しなければ体も鈍りますし…。ただ、今は住むところにも食べることにも贅沢は言いません」 「そうか…、土方はどうだ?」 「…京に残る以上は、当初の目的だった仕事をやる必要があります。仕事には人もいる。いずれ人を増やすとなると、ここじゃ無理だと思います」 「…儂もおぬしの考えと同じだ。人が増えるための場所が必要だ」 お茶をずずっとすすり、ごくっと飲み込むと 「その場所を探すのを…土方、おぬしに任せてよいか?」 「…!ああ、もちろんだ!」 それぞれの能力を見極める力と…人をやる気にさせるのが上手だ。
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