部下たち

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廊下を歩いて、彼の率いる第七部隊のミーティングルームの前に来ていた。 あんな事の後で隊長面するというのは気が引けるが、かといって逃げるわけにもいくまいとカードキーを通してドアを開いた。 「あ、隊長お帰りなさい」 ヤイバが入ってくると同時に、デスクに座っていた1人が立ち上がって子犬のようにじゃれついてきた。 一見すると女性と見紛う程の華奢な身体と顔つきの黒髪の少年。 彼は櫻井アキラ。これでもれっきとした男性で、俗に云う男の娘と呼ばれる類の可愛らしい少年だ。 「おせーッスよ隊長。 副隊長の的確な指示でファントムエッジは殲滅出来たけど、隊長のアンタは何やってんだよ? 指示の1つも寄越さないで、挙げ句にミーティングに遅刻とか、何やってんスか?」 「…輪賀。それが上司に対する物の言い方ですか? それに指示を出すのは参謀役である私の役目ですよ? それを引き合いに出して隊長を非難するのはやめなさい。 隊長には隊長の都合があるのですから」 「…けっ」 フィレに制された、この反発精神剥き出しの少年は輪賀リツ。 彼もまた櫻井アキラと同じ、ヤイバの部下だ。ヤイバに懐いているアキラとは裏腹に、事ある毎にヤイバに噛み付いてくる問題児だ。 実力はあるが、反発されているという事から扱いずらさでは部隊一だろう。 もっとも、ヤイバとて自身は反発されて当然な未熟さを持っていると自覚しているから、敢えてそれを正さない。 寧ろ、今のフィレのように変に取り繕う事でフォローされても逆に罪悪感が湧くだけだ。 もっとも、変に取り繕ってでも威厳を保ち反発を制していなければ上に立つ者とは成り立たないものだとも理解しているから、フィレにも敢えて何も言わない。
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