部下たち

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忍者といっても、我々がイメージしているような手裏剣を投げたり、忍術を用いたりはしない。 忍者という言葉が娯楽以外で歴史の表舞台から姿を消した後も、彼等は姿や形態を変えて歴史の裏で生き続けていたのだ。 近代の技術を用いた携帯武装を用いての暗殺や、化学兵器を用いた毒殺、そして敵地での諜報活動など、その役割は多岐に及ぶ。 唯一彼等の風習で残っていたのが、世襲制であり、彼は由緒正しい忍者の家柄の末裔なのである。 その家の跡取りから少し外れた子供が、偶然にも波動能力に目覚め、そして組織に配属された次第である。 とまあ、これで第七部隊全員の紹介は終わった。 「さて、もう良いか? 各自、ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ。 といっても、今日は九時までだ。またファントムエッジが現れたらすぐさま現場に駆け付け、これを鎮圧。 それまでの休憩だ。時間まで気を張ってろよ」 それだけを告げて、ヤイバは自分のデスクに着く。 相変わらず櫻井は子犬のように、ヤイバに付いてきてあれこれ話し掛けてくるが、当然ながらヤイバの隣の席は副官のフィレだ。 フィレは相も変わらず冷たい目でヤイバの方を睨んでいるため、多少構ってやりたくとも、それも出来ないわけだ。 こうして息苦しい時間ばかりが過ぎ、その日の勤務はファントムエッジ出現の報を受ける事無く終わった。 「…さて、帰るか。」 隊員たちに別れを告げ、組織の所有するビルから出てきたところで呟く。 表向きは国の所有する民間企業という事になっているこのビルは、差して見栄えもしないごく一般的なデザインで、ビル街のど真ん中に位置している。 そこから出てきたヤイバは、帰路に着こうとしたところで、また彼に呼び止められた。 「…また、あの女の所に行く気ですか隊長?」
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