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その少年がなぜ自分の年齢を知っているのか不思議だったが、とにかく彼は、その日を十歳の誕生日として年齢を数えることにした。
孤児院から逃げ出した彼が知ったのは、外の世界も孤児院とさして変わりない地獄だということだった。
ただ世界は少しだけ広く、生き延びるための選択肢は少しだけ多かった。しかし一方で、この世界では、固くなったパンも冷めたスープも彼には与えられなかったし、雨に降られた夜は独房よりも寒かった。
だから彼は盗み、騙し、奪わなければならなかった。
時には相手を誤って、足腰も立たなくなるほどぶちのめされた。
しかし彼は生きた。
立派なカイゼル髭の紳士から財布を盗んで捕まった時、彼が自分の年齢をはっきり十五歳と答えたことに、紳士と憲兵達は驚いた。それは浮浪児には珍しいことだった。
カイゼル髭の紳士は彼を引き取ると言った。
紳士の財布には今まで見たこともないような額の現金と、名刺が入っていた。
――国家治安維持局 局長 ライ麦・E・ラウゲンロール侯爵――
紳士は彼に言った。
「君は私の名刺を見たようだね。代わりに君の名を教えてもらおう」
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