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『この地下十三階に限っては、勤務交代を除き、決して看守室を出てはならない』
その奇妙な不文律を侵した若い看守は、この時初めて、彼の背中を汗でぐっしょりと濡らしている感情の正体を悟った。
恐怖だ。
「恐ろしいかね……」
この男は私の心の中を視ている。果ても底も知れぬ暗黒が、上にも下にも右にも左にも、ただ永遠に、無限に広がっている。その中で、壊れた人間が、意味性の欠落した奇怪な声をあげる。
――――ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ「今ではスッカリ壊れてしまったが」ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ「彼女も…………」ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ「…………アァ、彼女は女性だ」ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ「その彼女も、元は革命思想に燃える闘士だった」ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ「彼女は正義を愛し、この世の不正を憎んだ」ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ「彼女はアタマのいい女性だったから、君達のボス、つまりこの国の政権を担う者達が、民衆から絞り上げた金や労働を、ナニに使うのかを知っていた」ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
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