クソッタレの世界に唾を吐き棄てるように

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 電話の男は、クロワッサンマンの沈黙の意味を読み取っていながら、その上でいつもあえて彼を挑発するような調子で話した。そして彼との会話は性質上、いつも婉曲な言い回しで行われた。 「さて、君の仕事は確認した。今回はまた“随分骨の折れる作業”だっただろう。それにしても、君の手際はなかなかのものだが、欲を言えば少々雑だ。『清掃人』が愚痴をこぼしていたよ」 「不満なら他をあたってくれ。もっとも、あの仕事を丁寧にこなせる奴がいるならな」  何しろ、昨夜の現場はならず者の群れでごった返していた。その時点で、クロワッサンマンは標的を生きたまま捕らえる事と、自分が無傷で帰る事を諦めなければならなかった。  彼はならず者共の群の中に潜り込んで群のリーダーに近付き、今も革ジャケットのポケットに入っているヘッケラー&コッホの9㎜弾でリーダーの頭をぶち抜いた。そして混乱するならず者共を両手で掻き分けながら、追いすがる者を片っ端から撃ち倒した。  とてもじゃないがスマートとは言えない。しかし今回与えられたカードの中にはそれくらいの手しかなかったのだ。
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