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「いやいや、気に障ったのなら謝るよ」と言いつつ、電話の男の口調には今にも歌い出しそうな機嫌の良ささえ窺えた。「むしろ、君がちょっとした騒ぎを起こしてくれたお陰で、かえって『清掃人』たちは仕事がやりやすかったはずだ。客観的に見ればね」
「分かってるじゃないか。むしろ礼をもらってもいいくらいだ」
クロワッサンマンの仕事は一人の標的を追って情報を集め、その標的を捕らえるか秘密裏に処理する事であって、戦争の真似事ではない。そういう大立ち回りは『清掃人』の仕事だった。しかし多くの場合、その境界線は曖昧で、今回に限って言えばその境界線なんてものは全く無かった。
リーダーは常に多くの仲間と行動を共にしていた。ただのチンピラの集まりだ。
だが、かえってその素人臭さがクロワッサンマンの仕事を難航させた。
クロワッサンマンはリーダーを処理した後、『清掃人』の一個小隊が到着するまでの間、店の入口に留まり、独り奮闘する羽目になった。
これが翻って『清掃人』の視点から見れば、「チンピラが銃撃戦を始めたから鎮圧する」という体のいい大義名分になったはずだ。
少なくともクロワッサンマンの耳には、「反国的思想を流布する疑いがある」などという具体性を欠いた理由よりは、よほどまともな響きに聞こえた。
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