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その上、『清掃人』が現場に到着した頃にはすでに、敵は三分の一近くにまで減っていた。クラブ『G・D』に集まるチンピラ共が、皮肉にもその穴ぐらに自らの屍を埋める事になったのも、ほとんどクロワッサンマンの功績と言っていい。文句を言われる筋合いなどどこにもない。
ただ連中は、クロワッサンマンのような人間が、自分達の職域に踏み込んで来るのが気に喰わないのだ。『清掃人』達は彼の眼を恐れ、また嫌っていた。疑いと謀略に血走った彼の眼を。
いや、それは何も『清掃人』達に限った事ではない。少し注意深い人間なら、奥行きのない澱んだ色をした彼の瞳の中に、薄昏い屈折した煌めきを見出すだろう。そしてそこには常に、魂の安寧を脅かす不吉な暗示が含まれている。
「何にせよ、君は与えられた役割を十分に果たしたわけだ。その働きには相応の報酬が支払われなくてはならない」
「当然だ。それから『種』を補充したい。大分ばら撒いたからな」
『種』というのは、弾薬を指す隠語だった。皮肉な比喩だ。その種はいかなる生命をも生み出さない。ただ奪うだけだ。しかしこの『種』の数は、そのままクロワッサンマンの命の量を表している。
「いいだろう。手配しよう。報酬はいつもの手筈で。『種』は今君の目の前にある煙草屋の主人に、紙巻きを二カートンと六つ、葉巻を五本、マッチを七箱買った客に渡すよう、昼までには手配する」
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