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緑生い茂る木々の中、白い襟巻を身に着けた黒髪長身の男と、
腰まで伸びた淡い水色の髪を後ろで束ねた、中性的な容貌の青年が立ち往生している。
困惑したように立ちすくむ2人の前には、気を失っている少年が倒れていた。
黒髪の男は、しゃがみこんで少年の脈をとりながら呟く。
「あー……なんか最近よく、拾いモノすんなぁ~……」
「……」
男の言葉に、青年の瞳が一瞬だけ剣呑な輝きを見せた。
それを男は気にすることなく、意識のない少年をまじまじと見た。
少年の乱れても輝きを失っていない金髪。
汚れてはいるが上質そうな絹のマントに、チュニック。
高そうな革のサンダルなどといった身なりから、男は貴族の子供だと判断した。
しかし、疑問が残る。何故こんなところに、そんな身分の高い子供が倒れている?
しかも一人で、ボロボロで。
夜逃げか? などと思ってみるが違うだろう。
考えを巡らせながら、観察していた男はふと、少年の左手に目を落とした。
視界に入ったのは、中指にはめられたぶかぶかの指輪。
銀の台座に青い宝石が鎮座した指輪だ。
見覚えのあるような気がする宝石の中の紋章に目をとめた男は眉間にしわを寄せた
「………………まさかな」
ボソリと、誰にともなく小さく言う。
青年は、黙って男と少年を見ているだけで何もしない。
男の行動を興味なさそうに見守っている。
風が周りの木々を優しく撫でていく。
男は、立ち上がりながらやれやれと肩をすくめた。
「しゃーない、ガキが1人や2人増えたって変わんねぇしな~」
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