相川功一の人間観

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 “恋"をしたことはあるだろうか。  きっかけは様々だが、それに気付いた時、恋の感情はまるで波のように胸に押し寄せる。  そして恋に疎い人ほど、その感情を抑え込もうとする傾向がある。  ある人は別の何かに目を向け、またある人は思い出したかのように自分の作業を進める。しかし時に、溢れんとする感情が外へとこぼれ出てしまうことがある。  こぼれ出た感情は思いがけない行動へと繋がるだろうーー。 「……………………」 「……………………」  ではこのベンチに座る二人の男女も、その例の一つと言えるのではないだろうか。  ここは都内某所の公園。広さはさほど小さくなく、むしろ近隣に住む人々の散歩コースになるぐらい大きな敷地を有している。  時刻は既に6時は過ぎ。残り二ヶ月歩道で夏至になるが、この時間になれば公園内を歩く人も少ない。  彼らはそんな公園の、数あるベンチの一つに座っているのだ。
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