相川功一の人間観

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 制服を着ている為、男女は学生である事がわかる。男の方は窮屈そうに襟を正しながら薄暗い空を見つめ、女の方は顔を俯け、手元の携帯に目を向けていた。両者は互いにベンチの端と端に腰を下ろしているのだ。  取るに足らない光景だ。  偶然こんな時間まで。  偶然同じベンチに座り。  偶然一緒の時間を二人は過ごしている。  そんなどこにでもある日常風景、ただただそれだけのこと。 ――――なんてな、馬鹿馬鹿しい。全くそんな偶然があってたまるか。  少し意識して目を向ければ、すぐ違和感に気づく。  男の方は先ほどから女に何か言い出そうと口を開きかけ、そして思い直したように口を閉じるのを繰り返し。女の方も下ろした足をせわしなくフラフラと動かしている。 「あー…………」 「…………ん?」 「あ…………いや」  知り合い同士にしてはどこかよそよそしい男女。それだけでなく、二人して顔が真っ赤なのだ。 ――何?  女の方は顔を俯けてるから顔が見えない? ……いや、耳まで赤くなっているのだ。
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