相川功一の人間観

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「……ねぇ」 「……っ!」  二人の距離はゼロに――。  女は男に体を寄せたまま顔を向ける、両者の顔と顔の距離は20センチもない。  人々のための公園。だがこのベンチだけは、まるで別の世界かのような錯覚にさえ陥る。公園に人影がないためか、さらにその錯覚に拍車がかかった。 「…………」 「…………」  見つめ合う2人、時間がまるで無限にあるかのように感じているはずだ。  まさに、二人だけの世界――。  さて、溢れ出た感情は行動に繋がると、先ほど言ったのを覚えているだろうか。何も恋愛感情だけでなく様々な感情に言えるのだが、一方的な好意は時に奇行という形で牙を剥く事もある。  こぼれ出た恋の感情を受けとめる受け皿。真摯に好意を受けとめてくれる相手がいることで初めて恋が成立するのだ。  今回の場合男の方から何か切り出そうとしていたようだが、女の方はそれ以上に、実に積極的に動いたと言える。女性にリードされるとは、とんだヘタレである。
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