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「……!!スー……ハー……!!」
ヘタレ男の目つきが変わる。ここまでお膳立てされてようやく覚悟を決めたようだ。
「早川……聞いてくれ」
「…………うん」
真っ直ぐに女を見つめる男。押し気味だった女も、男の決意を受けとめようと姿勢を正す。二人の間に、緊張と期待をかき混ぜたようなもどかしい雰囲気が漂う。
これから何を言うのか十分理解しているのか、お互いに赤かった顔をさらに赤らめていた。
「俺は!お前の事が!」
「……うん!」
恋する二人のゴール。
この公園で、今まさに“カップル”が誕生しようとしているのだ。
「お前の事が!!!!!」
ーーーーだがまぁ、しかし
「ずっと好き「トニーぃぃぃぃ!!!!フリスビーだよおおおおおおお!!!!」
「!?」
告白の最中に、偶然フリスビーが飛んでくることもあるかもしれない。二人の世界をぶち破るようにフリスビーが飛び込む。先ほど二人の間にあったはずの空間がガラスが割れるように音を立て崩れ去った気がした。
「うわっしゃあああああああ!!!フリスビーだあああああ!!フリスビーだよぉぉお!!」
ベンチを前を走り抜ける影、元々公園なので他に誰か来ることは簡単に予想できる。
偶然子供達が6時過ぎに、偶然二人の座るベンチの前でフリスビーをする。そんな事があるかもしれないのだ。どんな状況でも対処出来る力こそ、今社会で求められているのである。
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