0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな学園長が、俺の担当と言うのは無理があると、心から思わざるを得なかった。
「えっと…学園長、いくら何でもそれは…」
と、俺は心配になったので声を掛けた。
流石に、年寄り相手に本気なんか出せない。
だが学園長は、そんな俺の思惑を無視するかのように、突然魔術を放った。
《ドォーン!!》
俺の座ってる位置から、真後ろにあった跳び箱が一瞬にして粉々に。
年寄り扱いした事は、一生黙って居ようと思った最初の出来事だった。
「で、何をすれば良いんだ?」
「頭の転換が早い若者で助かるわい」
そう思うのも無理はない。
今の俺に、この老いぼれに勝てる気が全くしないからだ。
どうせなら、この老いぼれに対して一発だけでも、自分の魔術が当たるまでは…と。
(気が遠くなる話しだな…)
「何をぼーっと座っておる?とっとと始めるぞぃ」
「あ、ああ」
-1時間後-
「ゼェゼェ…ハァハァ…」
俺は心底、この爺が人間では無いと思ってしまう。
理由は簡単…どんな相手でも、必ず隙と言うものが存在する。
だがこの爺は、隙があろと無かろうと俺の魔術を跳ね返すからだ。
「ほれ、どうした?早くせんと、日が暮れてしまうぞぃ」
(こんのクソ爺…)
とは言っても、攻撃魔術が当たらなければ意味が無い。
何処かに必ず弱点はあるはずと、俺は再度攻撃魔術の詠唱を行った。
【我願う 我想う 我望む 闇に沈みし亡者の叫び 混沌たる光よ】
「ニーブレスト!!」
俺は学園長に向けて、弱点を見つける為に魔術を放った。
しかし、さっきと同様に全部跳ね返されしまい、逆に俺の体力が限界に来ていた。
「くそ…」
(大した小僧じゃ。下級魔術とは言え、これほどの威力を放つとは…それ以上に驚くべきなのは、かれこれ1時間以上も攻撃魔術を使用して居る事じゃ)
そんな学園長の思惑を知らない俺は、1つの活路を見出だした。
だがそれは、1つの賭けにしか過ぎない。
成功するかは、俺自身判らないのだ。
「へへっ…弱点見ーっけ!」
(…!?)
学園長の顔色が変わった。
成功するかは判らないけど、一か八かやるしかなく、俺は最後の力を振り絞った。
【我願う 我想う 我望む 闇に沈みし亡者の叫び 混沌たる光よ】
「くらえ、クソ爺!」
最後の瞬間、何かが突然切れたかのように、俺は意識を失った―。
最初のコメントを投稿しよう!