0人が本棚に入れています
本棚に追加
意識を失った俺は、そのまま保健室に運ばれ、2日間眠り続けたらしい。
あの時、俺が放った攻撃系魔術がどうなったのかが気になった。
とは言え、現実感の無い世界が今となっては、それが真実となっている。
魔術と言う不可思議な事が、現実に起きてる以上は信じざるを得なかった。
そんな風に考えていた俺は、意識を取り戻した。
(まだ頭がクラクラするし…最悪)
と、奥の方で微かに声が聞こえた。
《楓、大丈夫かなぁ?》
《魔術の使いすぎで、今は眠っとるだけじゃ》
学園長と瑞樹の声。
何を話してるのか、ここからでは良く聞こえなかった。
だけど、どうやら魔術の使いすぎによるものらしい事が判った。
とことん自分の未熟さに、思い知らされた気がした。
《ガラガラ…》
誰かが入ってきた。
迎えたいところだが、身体が重くて自由に動けなかった。
「楓、大丈夫か?」
まぁいつもの事だなと、つい自分なりに納得してしまう。
「大丈夫…と言いたいが、身体が動かん」
身体が鉛みたいに重く感じた。
魔術を使いすぎれば、こうなるんだなと実感した。
そう言えば授業で、魔術の過度の使いすぎは体力は勿論、精神力をも削るって言ってた事を思い出した。
「あれだけ無茶をすれば、誰でも意識を失うもんじゃい」
(それをアンタが言うか…?)
とは言っても、身体が動かないのが何よりの証拠。
言われても仕方ないなと思った。
しかし、あれだけ魔術を放ったのに、かすり傷1つついてない学園長。
全力でやっても、傷1つすらつけられないようじゃ、俺はまだまだヒヨッコって事だな。
(クソッ…)
俺は自分の未熟さに、腹立たしさを感じていた。
いつか学園長をも超える魔術使いになってやると、自分に覚悟を決めた。
その為には身体を治して、また1から特訓し直してからだ。
「楓も無事だったみたいだし、俺はそろそろ帰るわ」
瑞樹はいつもの調子で、一言残して帰って行った。
「なぁ学園長…俺…」
それ以上は言えなかった。
未熟な自分が居る事と、魔術を上手く制御出来ていない自分が憎らしいからだ。
「…強くなりたいかね?」
学園長の言葉…。
俺には、痛いほど胸の奥で響いた。
初めて味わった屈辱。
泣きたいくらいの敗北感。
「ああ…強くなりたい…」
どんな結果になろうと、俺は強くなると言う決意を胸に前へ進む事を誓った―。
最初のコメントを投稿しよう!