0人が本棚に入れています
本棚に追加
今ある現実は、目の前に訳の判らないバケモノに対して、俺は何も出来ないと言う事だけ…。
そして、バケモノが俺の胸に鎌のような腕で突き刺すその瞬間まで、俺は足掻く事も嘆く事すら叶わないのだ。
(あぁ…俺、死んだのか)
呆気なく、そして無様に散った自分の命に、少し後悔が残った気がした。
「おい、かえ…で……楓!」
(呼んでる?誰だ?)
朦朧とする意識。
俺は、自分がどうなっているのかさえ判らない。
そんな状態なのに、そっと目を開けて見る事にした。
「ん…?」
目の前に居たのは瑞樹だった。
瑞樹が、必死に俺の名前を何度も呼んでいた。
「楓…?楓、大丈夫か?!」
俺の頬に何かが落ちてきた。
(水?)
いや、違う…。
これは瑞樹が、俺を心配するあまりに流した涙だった。
「瑞樹…何でそんなに泣いてんだよ?」
そんな俺の問いに、瑞樹は泣きながら答えた。
「だってお前、死んだのかと思ったんだぞ!」
何を言ってるんだ?
俺は死んだから、喋って…?
(…あれ?)
この時、俺は頭の中を整理して、自分の置かれてる状況を見渡した。
最初のコメントを投稿しよう!