幸せ

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幸せ

聞きながら 涙が止まらなかった。 父さんはその時に していた仕事を捨てて、 俺のために 手話を勉強したのだ。 俺はそんな事知らずに、 たいした収入もない父親を 馬鹿にしたこともある。 俺が間違っていた。 父さんは誰よりも 俺の苦しみを知っていた。 誰よりも俺の悲しみを 知っていた。 そして誰よりも 俺の幸せを願っていた。 濡れる頬をぬぐう事もせず 俺は泣き続けた。 そして父さんに 暴力をふるった 自分自身を憎んだ。 なんて馬鹿なことを したのだろう。 あの人は俺の親なのだ。 耳が聞こえないことに 負けたくない。 父さんが 負けなかったように。 幸せになろう。 そう心に決めた。
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