「ちっ…ガス欠かよ」

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どこまでも続いて見える地平線。吹く風は砂塵を巻き上げ喉を蝕んでいく。 おおよそ乾燥帯に属するであろうこの土地に、男の存在は酷く滑稽に見えた。 決して清潔とは言えず、バラバラに切り揃えられた黒髪。 身に纏う物は黒で統一されており、黒いロングコートの端々に巻き上げられた塵が付着し、それを夕陽が照らす事でちらちらと光らせて見せる。 瞳の色は黒く、背の丈は180cm前後の細身の体型。 肌の色や言語から判断するに、東洋の出身であると思われる。 男はコートの右胸にあるポケットからタバコを取り出し、火をつけようと軽く息を吸い込むのだが瞬間、巻き上げられた塵に思わず咳込んでしまった。
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