「悪は」

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この国は、幾つかの地域に分かれている。 その中で一番治安が悪いスラム街3区。常時喧騒が絶えない。 下手したらその辺に死体が転がっているような場所で、5、6人のチンピラが声を荒げて走っていた。 4、5メートル後ろでは、黒いコートを身にまとった17、8ぐらいの少女が肩まで伸びた黒髪をなびかせて追いかけていた。 「待て!!」 「だ、誰が待つかよ!!」 「待ったらその刀で斬るんだろ!」 少女の左腰には確かに刀が添えられている。 顔立ちの整った美麗な少女にはとても似合わない。 「なあ、あの女、何者なんだよ!!」 男の一人が大声で怒鳴り散らす。 その声に答えたのは、チンピラのほうではなく、少女だった。 「ウロボロス戦闘部隊幹部、キアラ、だ」 そういった瞬間、少女は男達の前方にたっていた。 なぜ、後ろで追いかけていた少女が前に立っているのか――― 考えようとしたそのとき、少女がぼそりと呟いた。 「悪人は  死  あるのみ―――」 それとほぼ同時だろうか、男達の首が、すべてはねとんだ。 血は勢いよく噴出して、あたりを赤く染める。 シャン、と音を立て、キアラが刀身を鞘に収めた。 突如、上からコンクリートブロックが無数に降ってきた。 ブロックの隙間から見えたのは、こちらをみて笑っているチンピラ共。 ――――しまった。 反応できず、目の前にブロックが迫る。 ――――当たる。 そう思って、ぎゅうっと目をつぶった。 が、聞こえたのは人体にあたる音ではなく、 銃声と、ブロックが粉々になるような音。 「あっぶねーー!!間一髪だったな!」 聞き覚えのある声のほうを見ると、そこには、チームを組んで一緒に任務をこなしているアーサーが居た。 手にはライフルを持っている。 反対側には粉砕されたブロックが落ちていることから、どうやら弾いてくれたようだ。 上を見上げると、壁に血がついている。これも撃ったらしい。 「やっときたのか。てか何やってた!」 「え、犬に絡まれた」 キアラはあきれてハァ、とため息をついた。 「・・・いくぞ、アーサー」 「はいはーい」 二人はその場を離れて、軍に戻ることにした。
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