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「貴様は行かぬのか?」
我の問いに一瞬だけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに苦笑しながら口を開く。
「俺ぁ先生だ。この学校の体育教師。」
────何だと…?
我は鬼の頭から足先までを観察する。……確かに着崩れてはいるが、スーツを着ていた。
「少しだけあんたがあの“毛利”でないことは分かった。悪かったな…」
「分かればよい。……貴様、いや先生の名前は?」
先生と分かった以上、鬼と呼ぶのには気が引けた。
それに何故だか知りたかった、この男の名前が。
「……長曾我部元親。」
何かを堪えたような声色。重苦しくなったこの空気とは逆に、我は何とも言えない胸の高鳴りを感じた。
「毛利サン、教室に案内するからおいで。失礼するよ、西海の鬼。」
そう言って我の手を引く猿飛。優しく引くその手に従い、我も歩き出す。
途中で振り返ると、先生はまだ我等を見つめていた。我が軽く頭を下げると、どこか寂しそうに手を振ってくれた。
───
───────
時は流れ、昼休み。
「毛利サン、一緒に食べない?」
猿飛が大きな重箱を2つ持ち、近づいてくる。
「猿飛、それはお前の弁当か?」
「俺様だけじゃないよ、旦那の分……って分からないか。おいで、俺様のお友達紹介するからさ。」
───友達…
猿飛の友達だ、きっと面白い奴ばかりであろう。ならば我も仲良くなりたい。
「一緒に食べたい!」
「はいよ。」
優しい笑みを浮かべる猿飛。朝見た猿飛とは別人のようだ。
「あ、今から会う友達も毛利サンを別の毛利サンと間違えると思うけど…怒らないでやってね?」
「もう怒らぬ、似た者がいるのだから仕方ない。……それに猿飛の友だ、我も仲良くなりたいからな。」
せっかくの学校生活。どうせなら楽しく過ごしたかった。
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